アシジマーチに参加して

召命促進チーム ペトロ 松本 巌 

 あの暑かった夏がうそのように、雨の日が続いた秋。そしてもうクリスマスを迎えようとしている。こうして一年がおわり、私ももう中年のドアの前に立ってしまっている。しかしまだ体は動く。今年の夏、念願だった“アシジ・マーチ”に参加してそう思った。

 日本における《ユースフランシスカン》の養成。それがどれほど急務なことかは説明する必要もない。日本社会に先駆けて進行している教会(修道会)の高齢化は深刻な現実だ。なにも日本ばかりではあるまい。そこで、何とかしようと考えたのか、イタリアには二十四年も前から取り組んでいる《フランシスカン・ユース》の体験的養成プログラムがある。

フランシスカン最大の遺産、アシジ・ポルチュウンクラを思いっきり青年たちにぶっつけるストレート勝負のこの企画は《アシジ・マーチ》と呼ばれ、八月二日のポルチュウンクラ聖堂記念日に「罪の赦し」を受けにアシジを目指してフランシスカンのユースグループが巡礼する12日間の信仰の旅だ。

 イタリアのフランシスコ会十九管区(?)と女子フランシスカン修道会とが協力して企画するから規模もでかい。巡礼の前半九日間は各管区のアニメーターが責任をもつ。トレント、トスカーナ、ウンブリア、ナポリ、シチリア・・・、それぞれの管区の拠点からそれぞれの管区が募ったグループが旅立つ。私たち日本から参加した七人は、北海道の釧路・帯広地区で司牧を担当しているベニス管区のグループに混ぜていただいた。通訳はベニスからの宣教師アルフォンソ・プポ兄弟にお願いした。

 釧路で働いている兄弟カリシモ・ロンデのふるさとでもあるウリネ州ジェモナの修道院に集まったベニスの青年グループは総勢六十名。ここからファンナまで9日間、一日最長二五キロを歩いていく。ファンナからはバスに乗って、聖痕の山ラベルナを経てアシジ郊外に。そこから最後のクライマックスを迎える。苦楽を共にして共同体に成長した一行が、大勢の一般巡礼者が待つサンタマリアデリアンジェリ聖堂前の広場の端に到着する。「ベネトのグループが到着しました!」スピーカーからの大歓声と歌と踊りに迎えられ、一行は地面の石畳に接吻し、立ち上がると全員で手をつないで一気に一〇〇メートルダッシュで、前方ステージまで駆け抜ける。「やっと着いた!」。

歓喜の中みな抱き合って喜びを爆発させる。そうこうしているうちに次々とイタリア各地からのグループが到着しステージ前は踊り狂うフランシスカン・ユースでいっぱいになる。2千人はいたか。「こりぁすごい」。なにがすごいかといえば、ステージで踊りまくっているのはいかにもイタリアのマンマのごとく太ったシスターたち。これには驚いた。

 熱狂的な到着のセレモニーがひと段落すると、いよいよ「罪の赦し」を受けるためにサンタマリアデリアンジェリ聖堂内のポルチュウンクラ聖堂に入る。先ほどの騒がしい歓喜の熱狂が一気に静寂な祈りの雰囲気に変わった。4人ずつ手をつなぎ、列になって大聖堂の入り口に進む。両脇をボランティアの人たちが人間の鎖となって通路を確保してくれている。その中を手をつないで進んでいくと、ボロボロと涙がこぼれだした。圧倒的な神の赦しを前にして私はうろたえた。「わたしはあなたに罪を犯しました。もう息子と呼ばれる資格はありません」。放蕩息子のことばが私の思いと重なった。もう、文章に書くのはここで止めよう。スピリチアルな体験を他者に伝えることは本当に難しい。ただ、私の《終末論》の理解がまったく変えられた体験をしたということは確かだ。

 来年のアシジ・マーチは二十五周年を迎える。あのようなすばらしいフランシスカン的フラテルニティーを体験する機会を日本の青年たちに提供できれば・・・、と思う。アシジ・マーチの様子は
こちらを参照してください。

(まつもと いわお 三軒茶屋教会助任 管区召命促進チーム)