ヤッシン師殺害

3月26日

アンジェロ 春山 勝美 神父
Fr.Angelo Haruyama Katsumi, OFM
haruyama@netvision.net.il

3月22日(月)、朝6時半、キリスト復活記念聖堂での修道院ミサに香部屋係り助手のアラブ青年の姿がありませんでした。明文化した就業規則がない雇用関係なので、休暇をとったのか、サボりなのか気にしだしたらきりがないので、気にしないようにしているのですが。午後の「主の受難・死・復活」行列には勤めを果たしていました。

翌23日、修道院ミサ前、顔をあわせたので、昨日の朝のことを聞きました。答えは意外でした。いつもの時間に家を出たのだが、イスラエルのチェックポイントで止められ、出勤時間6時に間に合わなかったとのことでした。この日の朝5時、ヤッシン師がイスラエルのミサイル攻撃を受け、殺害されました。イスラエルはヤッシン師殺害と同時に、アラブ人がイスラエル地区に入ることを厳しく規制したのです。

パレステイナ自治政府アラファト議長は、ヤッシン師の死を悼み、同時に、イスラエルへの報復を秘めた三日間の喪に服するよう呼びかけました。エルサレム旧市街は生鮮食料店を除き、店を閉めています。

私が事件を知ったのは22日のミサを終え、部屋でインターネットに接続した時でした。事件から二時間、日本の、また、世界のメデイアがすでに報道していました。「とうとう」と言うのが私の最初の思いでした。イスラエルはこれまで、折りあるごとに、ヤッシン師暗殺もテロ対策のうちと言っていました。事実、彼は何回かミサイル攻撃に遭い、難を逃れていたと記憶しています。

メデイアはこのイスラエルの暴挙を糾弾する世界各地の抗議行動を伝えています。また、その論調はおおむねイスラエル・パレステイナ双方の暴力の応酬が加速し、和平実現が遠のく、と言うようなものです。それに、パレステイナ過激派が指導者暗殺に抗議してイスラエル全土で自爆攻撃を仕掛けるとも伝えています。呼応するように、在イスラエル大使館は、即日、在住邦人に緊急危険情報を出し、注意を呼びかけました。エルサレムは自爆攻撃のターゲットのようです。NHKは特派員のレポートを通して、エルサレムでは要所に警官を増員して厳重警戒態勢に入ったと伝えていました。

この三日間、エルサレム旧市街も新市街も平常です。旧市街は喪に服しています。しかし、キリスト教会の学校は事件当日の一日だけ、休校でした。商店は扉を細めに開けて少ない客足を逃すまいと懸命です。キリスト復活大聖堂では、この時期、わりと巡礼団を見かけます。事件当日、道の会主催の宮崎カリタス会シスターたちの巡礼団が来ました。韓国の巡礼団も何組か来ています。ロシアからの巡礼団も多いです。数年前ほどではないですが、卒業旅行の一人旅の青年もいます。

事件当日、自爆テロリストが、これまでもいくたびか、ターゲットにしたマカネ・ヤフダ市場(Makhane Yahuda)に買い物に行きました。市場の入り口ではボーダーポリス(Border−Police)が手荷物検査をしていましたが、これは、この日に限ったことではありません。それに買い物客も緊張した様子ではありませんでした。

新門近くの交差点ではボダーポリスがアラブ人のIDカードをチェックしています。昨日はアラブ女性が長々とチェックを受けていました。今日は大聖堂前で5-6人のアラブ少年がIDチェックを受けていました。まず、IDカードを取上げ、本署(ダヴィデの塔の並び)とトランシバーで連絡を取り、本人確認をするのです。顔見知りの警官に「忙しくなったね」とからかってやりました。

今日4日、日本のテレビも伝えていましたが、ナブルス(シェケム)近くの検問で、自爆ベルトを身に着けた14歳の少年が逮捕されました。2500円(100シェケル)で請け負ったとのことです。月初めには、12歳の子供が爆弾を隠し持ってチェックポイントを通り抜けようとして逮捕されました。この少年は大人から頼まれるままに運んでいたことが分かり、まもなく釈放されました。

今は携帯で爆発させることが出来ます。恐ろしいことです。