ムジゲ(虹)の便り

クレト 中村 道生 神父
cletusofm@hotmail.com
Frnaciscan Friary

 聖心の月を迎えました。いかがお過ごしでしょうか。

 ソウルは初夏を思わせる暑い日が続いていますが、韓米関係はこのところずっと冷え込んでいます。大統領弾劾訴追裁判は無事事なきを得、与党のヨッリンウリ党も過半数を獲得しましたが、イラク派兵問題では舵取りが難しくなってきているようです。韓国の国民の多くは派兵反対ですし、市民に支持されて出来た政府としても、アメリカの要請には同盟国として派遣せざるを得ないジレンマがあります。

 ブッシュ政権は実際の必要と韓国への圧力を兼ねて、在韓米軍をイラクに送ることを決めています。
http://japanese.joins.com/html/2004/0531/20040531175219200.html

 「アラブ系を除いて今最も反米感情が激しいのは韓国だ」と言う人さえいます。このことを、韓国の保守系勢力で、米国の権力と密接に繋がってきた人々はかなり憂慮していますが、

http://japanese.joins.com/html/2004/0530/20040530182220200.html

金大中氏は、米軍の兵力削減を一つの機会と捉える機会だと提言しています。

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/06/01/20040601000045.html

 韓国の市民は政治的にはかなり成熟しているように思えます。金大中政権に始まった太陽政策は地道に続けられています。リョンチョンの悲惨な事故には、全国民あげて素早く支援に取り組みました。北朝鮮の身勝手な態度にもかかわらずです。これによって南北将官級会談の開催にもこぎつけることが出来たのではないかと思っています。

http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/05/26/20040526000006.html

 韓国には、日本の拉致問題に比べ、はるかに深刻の問題があるにも拘らず、太陽政策を支持しているのは、ただ単に同一民族だからと言うレベルだけでなく、50年間の長い敵対関係の中で苦しんできた人々が、平和は決して武力では成就しないことを学んできたからだと思います。いまだに1000万人の離散家族があり、政府が公認している拉致されている人は500人近くで、これには軍人として捕虜にされたものは含まれていません。
 一方、日本では戦後すでに60年を迎えようとしている現在、戦争の悲惨さを知らない人々が多数となり、アメリカの核の傘の中で平和を享受してきた為に、自分さえ良ければという発想が大勢を占めるようになってきているのではないでしょうか。正義や平和についての軟弱さを感じます。

 小泉首相の今回の北朝鮮訪問は、彼の政治的な思惑は別として、韓国では全般に高く評価されています。それは朝鮮半島の平和という視点からです。日本の場合は単に損得でしか評価されていないのが残念でなりません。

 韓国とは反対に、日米関係の恐ろしいほどの緊密化。それに対するマスコミの不感症はあきれます。日本はいつの間にか多国籍軍の一つにされ、さらに、横田米軍基地に航空自衛隊が入るとのこと。なんと親密な同盟国関係でしょうか。これが内蔵している恐ろしさは計り知れません。多くの人はこれでアメリカが守ってくれるので安心だと思うのでしょうか。

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20040531k0000m010094000c.html

平和憲法はもう葬り去られたかのごときです。手をこまねいて座視してしていいのでしょうか。今まで多くの血が流されてきたのに、それに耳を傾けなければ、そして平和への道を歩まなければと思います。

 先日、釜が崎の本田兄弟が「平和・命分かち合い」での講演会にソウルを訪問されました。その時、最も貧しくされた人々に聞きそこから学ぶべきだと語られたのが印象的です。それなのに日本では、イラクで拉致された3人に対し、さらには北朝鮮に拉致された家族会に対してパッシングが行われているとは。しかし、おそらくまだ私もパッシングする側に立っているのだと思います。なぜならイラクの、北朝鮮の、拉致されている留守家族の痛みをほんとうに共感できていないからです。